9/26/2012

赤いガウン。

随分と涼しくなったと思ったら今日は夏のような日差しである。
けれども、もう秋である。

3度目の夏を迎えた彼は、3度目の秋を迎えることはできなかった。
寒い空の下、赤いガウンを着てお散歩をする姿をみることはもうないのだ。

天からのむかえを待つ患者の家族によく聞かれることがある。
「少しだけ、自宅に戻ってきてもいい?すぐに戻ってくるから大丈夫よね。」

無論、その答えを出すことはできない。
誰にもわからないのだ。

以前、1年間毎日欠かさずにお見舞いにきていた人がいた。
彼女が自宅に戻っていた数分の間に、旦那様は天にむかってしまった。
このようなことはとても多い。

赤いガウンのおじ様の調子がよくないとの連絡が以前の同僚からきた。
メールの文面に詳細はなかったが、
会いにいかなくてはと、そう思った。
急いで会いに行かなくてはと、そう思ったのだ。

仕事を終え、その足で病院に向かった。
奥様と娘に囲まれて、いつものように眠っているおじ様。

入院してきたときから人口呼吸器を装着していたおじ様の声を聞くことはなかった。
でも容易に想像することはできる。

きっとおじ様は、穏やかな低めの声で語りかけるように話すのだろう。
話すことも動くこともできなかったけれど、病室を癒しの空間に変えるほどのエネルギーをもっていた彼は、心配事がなくなったのかもしれない。

会いに行った日の次の日の早朝、天にむかった。
もう赤いガウンを着ている姿がみれないと思うと寂しい。
やっと、赤いガウンを着る季節が巡ってきたのに。

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