3/28/2011

甘い記憶  琴子と結城。



帰国の日、久々に日本の本屋に入る。無性に本が読みたくなり手当たり次第に本を手にとり、買い物依存症の人のように、その積み上げた本を更に吟味することもなくレジに運ぶ。

なんとなく、恋の話が読みたかった。それはきっとひとつの大きな恋に終止符が打たれた直後であったからだろう。だからきっとなんとなくではなく必要としていたのだろう。恋の話を。

新潮社から出版しているその本は6つの短編で構成されている。なんとなく開いたページは83ページであった。その作品を夢中で読んだ。そして、琴子を愛おしく思った。そして、結城を好きになった。そして、またリュックを背負い旅に出たくなった。ひとり旅ではなく誰かと行きたくなった。楽しいね、美味しいね、また行きたいね、次はどこに行こうか。そんなことを、オウム返しのように繰り返してくれる人でいい。誰かと旅にでたくなった。誰かといる煩わしさなど大したことではない。琴子と結城のように旅をしたくなったのである。

帰国した次の日、更に寂しくなった私は近所を散歩した。そして熱帯魚屋を見つけた。その古びた熱帯魚屋で私の目に飛び込んできたのは「カメ」であった。優雅に泳ぐその「カメ」から目が離せなくなり、購入した。名前は結城ではなく琴子にした。





甘い記憶 (新潮文庫)

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