6/05/2009

精神。

看護学校時代の友人から10年ぶりに連絡がきた。それは、病院へのお誘い。私の通っていた学校は日本最大規模の心も風邪をひいた人たちの病院である。彼女はそこで働いている。最近、新たに病棟を立ち上げるのに人がいないのだとか。「正職員にならない?」との言葉にどこか心惹かれる。

同僚の代わりに仕事を延長し、12時間もの間心の風邪をひいた人たちと一緒に居た。普段は6時間であるから2倍の時間を供にしたことになる。人は夜になるにつれて不安が増強するようだ。焦燥感・幻聴・不安・希死念慮・・・様々なものがその場に渦巻き始める。その渦中に久々に身をおいた私は、生きていることの脆さに直面する。

春樹さんの新刊にでてくる言葉を思い出す。
「見かけにだまされないように。現実というのは常にひとつきりです。」

脆弱な人たちはこの世界で生きて行くことができないのだろうか。そうではないかもしれないけれど、現実にはとても難しいものであると思う。この世界で生きていくには、見かけにだまされることが重要である。現実など見る必要はない。深く考えてはいけない。耳を研ぎ澄ましてはいけない。目を凝らしてはいけない。春樹さんの言うように現実は常にひとつきりであり、そのひとつきりの現実に気づいたときに人はふたつの道のどちらかに進んでいくのだろう。そんなことを、希死念慮にとりつかれてパニックになった人の手を握りながら、その強く握り返された力に何かを感じ、そして思ったのである。


脆弱である私が、仕事でも日々その渦中に身をおくことはとても危険を伴うことなのかもしれない。見かけにだまされることができない私が、ふたつの道に直面したときにどちらの道を選択するのかはわからない。けれども、少しでも危険が伴うと体が察知しているのであれば、なるべく回避していきたい。だから、彼女からのお誘いはしっかりと考えてから結論をださなくてはいけない事なのだろう。

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